冬を吹っ飛ばす祭

師走に入り、旧暦11月に行われる霜月祭がそろそろ始まっている頃です。

厳寒の頃、新春を迎える前に、神々を呼び出し、舞や楽で神々をもてなすこの祭。

一年の穢れを祓い、新しい年がいい年であるように願う予祝祭でもあるのですが、なぜこの時期にと考えると、厳しい山間の自然の中で、弱まった陽の力を蘇らせる強い願いを担っているものでもあるのです。 

 

そう考えると、このような祭は日本だけなのか?と思えますが、やはり同様の祭が、アルプスの山々を抱き厳寒の地に暮らすチロルの町にも存在していることを知りました。

   総面積の80%以上がアルプスの標高の高い山々で占められるチロルでは、人々は標高の高さと冬の寒さを凌いで孤立同然で自給自足の生活をしていました。そのため、チロルの渓谷では谷ごとに独自の文化や風習、方言などが誕生したのです。厳しくて過酷なアルプスの中で暮らすことは決して容易ではありませんでした。

この話は南信濃の「日本のチロル」と言われる下栗の里を思い起こさせます。

チロルに住む彼らの先祖たちは、太古の昔から冬の恐怖に慄き、春を待ちわび、春は冬を追い払うものとして、それぞれを象徴する仮面と仮装で飛び跳ねたり踊ったりする祭を行ってきました。それがキリスト教が布教されるにともなって、キリスト教の祭事として取り込まれていきました。これが「謝肉祭」です。

中でも四年に一度、アクサムス村で行われる「ファスナハト」の祭の中の「ヴァンベラーライテン」(…太っ腹の祭とでも訳されるのか?)は、チロルの人々の魂を感じさせる荒々しいものです。祭のそれぞれの役割は、先祖代々決まった家が行うもので、これも日本と共通していますね。

荒々しい大格闘が繰り広げられるこの祭は、まさしく「冬を吹っ飛ばす祭」なのです。

弱まったエネルギーを取り戻し、冬を吹っ飛ばし、春を呼び寄せる強い願いを秘めた祭が、三遠南信地域と同様、遠いアルプスのチロルでも行われていると思うと、厳しい自然に生きる人々の熱い想いを改めて感ぜずにはいられません。

                       (参考:季刊「民俗学」2008秋 「チロルの祭」)

三遠南信 | 民俗芸能・フォークロア | 祭り
2008/12/12 21:01



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