世界1の長寿村 フンザ
カリマバードはフンザの中心、バザールもあるし、お城もある。バルティット城が、フンザの谷を見下ろす崖の上に建っている。まるで天空の城のようだ。望楼がすっくと立ち上がって、対岸のナガール王国の進攻に備えていた。バルティスターンから嫁いできた王女の結婚記念品だそうだ。日干し煉瓦に白い漆喰が塗りこまれた木造四階建て、屋根に採光と風を入れるため大きな穴が開けられている。雨が降ったら蓋をするのだろうか。この天窓様式は村の家でも同じだった。
お城のすぐ下は学校のグランドで、子供たちがクリケットに夢中になっていた。パキスタンはどこへ行っても、クリケットがさかんだ。昔、空き地があれば野球に興じていた戦後の日本みたいだ。段々畑がていねいに耕され、杏がどこもかしこも満開で、霞か雲か匂いぞいずる。フンザ川が光り、ディラン、ラカボシの高峰が連なる。ルードリッヒ王がこの城に立てば、泣いて喜んだだろう。
バザールでは干し杏と胡桃が目に付く。屋根の上で干した杏は砂混じりだが、天然ものだからこっちのほうがいい。高地の杏は、長寿に効くという。カスピ海のコーカサス地方、エクアドルのビルカバンバ村とともにフンザは世界三大長寿地域なのだ。外界と隔絶されて先進国の食文化が入ってこなかったからだ。その証拠に、ビルカバンバはハイウェーが開通して肉やコーラが入るようになり、一気に寿命が落ちたという。
バザールの道端で、年寄りと子供たちが並んで座っていた。老人たちは、ただ道行く人を眺めているだけだったが、そのしわの深さに揺るぎない人生を感じた。おじいちゃんの隣でうれしそうな子供たち。
狭い抜け道を羊たちがメーメーと降りてくる。ひときわ大きな声で鳴いているのは赤ちゃん羊だ。ちょっと足元がおぼつかなくなると、羊飼いが抱きかかえてやる。
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